その特徴的なフレームデザインから、BESVを代表する存在であるPSシリーズ。その中でもPS1とPSA1はよく比較される存在でもあります。
前回の『SPEC編』に続き、今回は『実走編』をお届けいたします。2車種を実際に乗るとどういう違いを感じることができるのかレビューしていきます。
Contents
【実走編】『PS1』×『PSA1』BESVの看板車種を徹底比較!
実走レビュー
下記のポイントを踏まえて、モトベロ名古屋星が丘、東山動植物園周辺コースを実際に2周程走り比べてみました。上り下りにスピードを出せる区間、ストップアンドゴーの多い信号多発地帯に車道歩道とバラエティ豊かな合計約6kmとなります。
体感のムラを抑えるため、アシストは基本的にアシストレベル2、登り区間のみアシストレベル3を徹底。星が丘テラスの前の坂を下り、三越前の交差点からスタートです。
都市区間(東山通り)
まずは信号の多い都市区間。若干下り基調のほぼ平坦直線ルートです。
1週目
1周目はゆっくりと歩道を進んでいきます。歩道と車道との段差はPS1、PSA1共にサスペンションがいい仕事をしてくれますが、早速ここで大きな違いがありました。
【SPEC編】でも書いた通りPS1は感触がかっちりしており、平常時はあまりサスペンションの影響を感じず、段差を乗り越えた際はゴムシートを挟んだような、衝撃の角を丸めてくれるような感覚があります。
一方のPSA1は常に柔らかい走行感で、特に段差乗り越えの際にはその柔らかさで衝撃をほとんど吸収してくれるような、厚手の絨毯で段差も均一化してくれるような感覚で、快適性という観点で言えば個人的にはPSA1の方が心地よく感じました。
ただし、良くも悪くも常時ややフワフワとした乗り心地なので、人によって好みが大きく分かれそうではあります。
2周目
ギアを切り替えながら車道を走行します。ほぼ直線とはいえ信号も多いため、快適に漕げる速度域で走行します。
どちらも使うギアは真ん中の2~3つ程度。この辺りのギアは共に歯数差がほぼ同じこともあり、PSA1でもギア間の落差が気になることはありませんでした。
またe-bike全般に言えることですがアシストのおかげで走り出しが軽いため、非電動スポーツバイクのように停車前にギアを軽くしておく必要がなくギアの切り替え頻度が高くないのも理由の一つかもしれません。
シティライドにおいての比較では、ライダーの求める走行性にもよりますが安定感、快適性という点ではPSA1が好感触と言えます。
平坦区間(東山上池線)
東山動植物園正門の手前で左折し、東山上池線へ。
ここからしばらく若干上り気味~ほぼ平坦な直線区間です。ここでは走行性能の差がよく分かりました。
1周目
フロントサスペンションを効かせたままガシガシ漕いでいきます。PS1は軽さとサスペンションの程よいバネ感もあって気持ちよく加速でき、アシストが切れる時速24km以上の維持もそんなに苦しくありません。
一方、PSA1はペダルに力をかけて漕ぐとサスペンションが影響して力が逃げてしまう感覚が強く、PS1のような加速感はありません。アシスト域を超えた時速24kmあたりから顕著に重さを感じるため速度維持には体力を使いそうです。
2周目
フロントサスペンションをロックして走行します。
PS1はよりカッチリとした乗り心地に。しかし、サスペンションが効いた状態のクッション性と加速性のバランスがとても良いので、PS1であえてロックする必要は薄いように感じました。
一方のPSA1は乗り味が激変。力の抜ける感じがなくなり加速感が一気に向上します。ただし、やはり車重もあり最高速度自体はさほど変化せず、力のロスがない分時速20km前後の速度維持がしやすい、という印象です。
スピードが出せる場面ではやはり加速性、最高速度共にPS1が一段上という結果になりました。PSA1もフロントサスペンションをロックすることで加速性は向上しますが、やはり重量差の分最高速度ではPS1に敵わない印象です。
登り区間(東山上池線終盤~東山公園第1号線)
東山上池線の終わり辺りから平均勾配約5%程の登りが始まります。
1週目
アシストをレベル3に、景色を楽しみながらのんびり漕いでいきます。
PS1、PSA1共に、共通の高性能モーターのおかげで足への負担もほとんどなく、快適に登坂ができます。PSA1で懸念していた力のロスや重量差もあまり気にならず、のんびり漕ぐ分にはほとんど遜色ないというのが個人的な感想です。
2周目
1周目と同じくアシストはレベル3、今度は時速20km以上を意識してガシガシ漕いでいきます。
この乗り方をすると、程よいバネ感でぐいぐい進むPS1に対し、PSA1は踏み込むたびにフロントサスペンションの浮き沈みが気になってしまいました。速度にそれほど違いは出ませんでしたが、PSA1は上下動が大きくパワーロスを感じる乗り心地です。
平地と同様、ガシガシと力強く踏み込んでいくと走行性能の差がはっきりと出る形となりました。逆にポタリング的なのんびりした乗り方ならPSA1も十分なポテンシャルを持っていると言えます。
また5%程度の坂ではアシストのおかげで軽いギアの出番がほとんどなく、むしろBESVモーターのアシストの優秀さを改めて知る結果となりました。
下り区間(東山東部第2号線)
登ったからには下ります。麓の信号までなので距離にして300m程ですがしっかりとした下り坂です。
ここで気になるのはブレーキの制動力。正直なところ、平地や登りではPSA1でも制動力の不足を感じることはありませんでした。
1週目スピードが上がり過ぎないようにブレーキを当て効きしながら、2周目はしばらく加速に任せて信号に差し掛かったらブレーキング。結論から言えば、時速30kmを超える速度域でも、PS1、PSA1共に十分な制動力を持っています。
PSA1の方が引きが重くやや力を要しますが、一般的な機械式ディスクの制動力の範囲。しかしながら、細かい部分でPS1の優秀さを感じてしまうのも事実です。特に顕著なのは当て効き時のコントロール。PS1は軽い力で引ける為繊細なコントロールが可能な一方、PSA1はやや大味です。
また短距離なら問題ありませんが、ブレーキを握りっぱなしで長い下りを降りる際には疲労感に差が出てきそうです。
番外編:激坂
アシストが優秀なおかげで、今回のコースでは登りでも下から2~3段のギアを使う機会がありませんでした。なので、番外編として近場の斜度15%の坂にトライ。短いので何本も登って色々試してみました。
この斜度を登るとなると、5%程度の登りでは平気だった4速でもはっきりと重さを感じます。それ以下のギアを使えば、時速にして12~15km程度ですがほとんど足への負荷を感じることなく登れました。
下3段のギアの歯数はPS1、PSA1共に全く同じで、重量差はアシストが補ってくれるため、登坂力はほぼ遜色ないと思っていいと思います。
また、このレベルの坂になると短距離でも下りが非常に怖いです。PSA1でも注意深くブレーキングすれば問題ないですが、PS1のコントロール性の良さは非常に安心感がありました。
まとめ
今回改めて実感したのは主に以下の4点です。
1:総合点ではもちろんPS1
まず、PS1とPSA1ではっきりと違いを感じるのは、ある程度以上まで速度を上げたときの走行性能と乗り心地です。
どちらもフロントサスペンションに起因する部分が大きく、常時柔らかい感触のPSA1は市街地で出くわす段差程度なら抜群のクッション性を発揮します。 ただし良くも悪くもややふわっとした乗り心地で、人によってはっきりと好みが分かれる部分だと思います。
一方でそのクッション性が仇となり、PSA1の加速性は今一つ。車重の差や最速ギアの差もあって巡航速度、最高速度もPS1に軍配が上がります。
2:街乗りならPSA1
一方でそこまで速度を上げない場面、歩道走行、ストップアンドゴーが多いシティライドでは意外なほどPSA1のポテンシャルの高さを感じました。
シティライドの場合「間のギアが欲しい」と思う場面もあまりなく、基本的に速度もそんなに上げないので制動性も問題なし。乗り心地に関しては上記の通りですが、街乗りするにあたってはPSA1も十分なスペックを持っていると言えます。
3:登坂力に差はないが踏み込み方次第では差も
登坂に関してはある程度速度を出して登るか、のんびり登るかで大きく変わります。本来登坂では重量差が響きますが、優秀なアシストがその差を埋めてくれるため、実際の速度、足への負担ともに有意な差はありませんでした。
軽いギアでのんびり登る場合にはサスペンションもあまり影響せず、上記の通りほぼ遜色なくグイグイと登ってくれます。グングン踏み込むと話は変わってきて、PSA1はここでも推進力を逃がしてしまい、フロントが大きく上下しパワーロスした感触に。
4:ギアの段数差はあまり気にならない
その一方で、違いが気になりそうで意外と気にならなかったのが変速機とギアの差です。
これは快適に漕げる中速域ではあまり歯数差に違いがないのと、違いがはっきりする程の速度域で漕ぐ場面があまり多くないPSシリーズの性質に起因します。「差はあるものの、実走での影響は思ったほど大きくない」といった塩梅でしょうか。
ただし、平地で14T以上の重いギアをペダリング可能の方は、また違った感想になると思います。
モトベロ全店で試乗が可能
いかがでしたでしょうか、今回はモトベロ名古屋星が丘の周辺コースを舞台にさまざまなシチュエーションでPS1、PSA1の【実走編】をお届けしました。
『PS1』、『PSA1』はモトベロ全店で試乗が可能となりますので、是非お店で違いを体験してみてください。